2021年11月2日火曜日

NO.319 日本とは何か

 * 我が家の書棚に並ぶ本のほとんどは亡夫の蔵書。彼は多分全て読んでいるはず。私自身が買ったものも、年々増えているが、積ん読が多い。いつか読むだろう、今読まなくても読みたいと思うという本はとにかく買ってしまう。何かという時、あ、その本はうちにあったよなと思って書棚を探すのが好き。わざわざ図書館に出かけなくていい。そうこうしているうちに買ったのを忘れて、同じ本を買ってしまったりする。我ながら馬鹿みたい!

* 選挙が終わって、日本はどうなるのかなと憂鬱になった気分のまま書棚を眺めていたら、2000年10月24日第一刷発行の<日本の歴史第00巻「日本」とは何か〜著者網野善彦 発行所株式会社講談社〜>が目に付いた。21年も前に<「日本」とは何か>という問いを発している。今現在私が最も感じていること、最も分かりたいことが<「日本」とは何か>ということなのだ。21年前、網野善彦はどう言っているのだろうかと興味を持った。

* 網野史学という分野があることは知っていても内容については全く不勉強。今回の選挙結果を見て「日本ってなんなの?!」と思ったので、この本を手に取ったわけです。

 手に取ってみると、この本が発行された日付2000年10月24日の朝日新聞夕刊の切り抜きが挟んでありました。夫がしたことでしょう。夫は2004年6月29日に亡くなったので、亡くなる3年半余り前にこの本を手に取っていたんだなと思うとこみ上げるものがあります。

 

切り抜いた新聞記事のリード部分は以下のとおり。

    日本史家、網野善彦氏(72)の新著が出た。『「日本」とは何か』。『日本の歴史』(全26巻、講談社)の第一回配本で、「歴史を見返すことが、今なぜ必要なのか」を新たな研究や史料の検討、考古学的な発見を示しながら説き進める。数々の「常識」や「定説」を覆してきた網野史学の概論とも言える一冊で、病をおして書き上げた。「日本」とは何か、そしてそれを問う意味とは.......。網野氏に聞いた。(渡辺延志)


 (本文)新著はこう書き出している。「人類社会の歴史を人間の一生にたとえてみるならば、いまや人類は間違いなく青年時代をこえ、壮年時代に入った。」

 「人類は、自らのうちに死の要因をはっきりと抱くようになった」のが「壮年」の理由だ。核など大量殺りく兵器を持ったこと、開発や生産の増大が引き起こした自然の破壊、公害なども人間の生存を脅かす危険のあることがあきらかになってきた。だが、それが歴史学や歴史観とどうかかわるのか。

 「人間は自らの努力で”進歩”してゆくという確信が近代以降の歴史学の根抵を支えてきたが、そうした”進歩”が人類の生存を脅かしている。前へ、前へ、の進歩史観は青年時代の歴史学。壮年期の人類にとって必要なのは、”進歩”の名のもとに切り捨てられてきたものに目を向けて、新たな人類史を描き出し、本当の意味での”進歩”とは何かを追求することなのです」と網野氏は言う。  

 切り捨てられ、無視されてきたものを新著は一つひとつ検証する。(今日はここまで。続きは明日にします)