2021年6月12日土曜日

139.コロナ時代のパンセ 書評

*  5月26日のブログに<辺見庸著「コロナ時代のパンセ」戦争法からパンデミックまでの7年間の思考>を買ったと書いた。今日の東京新聞朝刊にこの本の書評が載った。評者は鵜飼哲(一橋大名誉教授)。この書評のタイトルは「日本社会の結界破る言葉」。この本を買いたい、買わねばならない、読まねばならないと思わせる書評だ。私は辺見庸ファン(ファンというと軽薄な感じがするかもしれないが........)なので彼の新作は迷わず買ってしまう。とにかく本は読んでも読まなくても手元に置きたい、何かという時すぐ手に取りたい、図書館まで出かけて借りるということができない。で、断捨離どころか本だけはますます増える。

 この本を買ってみてちょっと驚いたのは、最終ページの、通常なら「あとがき」にあたるところを読んだ時。

<本書は月刊「生活と自治」(生活クラブ連合会)2014年2月号から2021年3月号に連載された「新・反時代のパンセー不服従の理由」を再構成したものである。本稿連載にあたっては月刊「生活と自治」編集室の山田衛、元木知子の両氏にお世話になった。記して御礼申し上げる。辺見庸>

と記されている。ちょっと驚いたのは、生協の月刊誌に辺見庸の連載があったこと。生活クラブ出身の現職区議会議員をを知っているし、組合員から都議会議員に立候補していることも知っているが、彼女たちの活動と辺見庸の言論とが結びつかなかった。どういう経緯で辺見庸の連載が始まったのか興味がある。

書評の一部を。<集団的自衛権の容認、安保関連法、特定秘密保護法、共謀罪と打ち続く安倍自民党政権の憲法破壊。相模原障害者大量殺傷事件、米国大統領選でのトランプの勝利....。「まさか」が現実に、「真実」が所在不明に、非常が日常になるとき、眼力を磨き続けることは至難の技だ。

 とりわけ日本社会には思考に無意識の萎縮を迫る結界が張られている。著者は記者時代の先輩の言葉を思い出す。「おまえな、オリンピックと戦争と天皇には勝てねえんだよ」。「けっ、しゃらくせえ!」が口癖だったこの人は、事故か自殺か不明の轢死を遂げる。「連日のオリパラ・ご退位さわぎ」はこの国のメディアの変わらない翼賛体質を露わにした。その先には改憲と戦争が待っている。これほど明白なことを指摘するにも言葉は結界を破らなければならない。そのためにこそ文体はとぎすまされる。>

 こんな書評が書かれるような内容が生協の月刊誌に連載されていたとは、私の偏見なのかも知れないが、やっぱり驚かされた。ともかく早く本書を読まねば。