2021年12月22日水曜日

NO.377 毎日新聞12月22日夕刊「特集ワイド」熱血 与良政談 〜与良正男〜


 *今日2度目の投稿ですがどうしても書かねばならぬと思って*

左の写真がボケちゃったので、全文書き写します。

熱血!与良政談

与良正男

なんて、ひきょうな国に

「引き続き真摯に向き合っていきたい」という岸田文雄首相の言葉がむなしく響く。

「森友学園」をめぐる財務省の決済文書改ざんに関与させられ、自ら命を絶った近畿財務局職員、赤木俊夫さんの妻雅子さんが国などに損害賠償を求めた訴訟で、国は突然、請求を全面的に受け入れて裁判を終結させた。

 「夫の死の真相を知りたい」と訴えてきた雅子さん側は、今後、裁判で赤木さんの上司らを証人として呼ぶ予定だった。それを封じる形で国が終結を急いだのは、よほど真相が解明されるのを恐れていたとみるほかない。雅子さんが「不意打ちでひきょうだ」と憤るのは当然だ。

 方針は13日に財務省が決定し、翌日、岸田首相に報告された。首相が強く異論を唱えたフシはない。つまり首相も、この方針決定に責任を負っているといっていい。

 そもそも国有地が安値で売られたのは、森友学園と安倍晋三元首相の妻昭恵氏が親しかったからなのか。財務省が改ざんに手を染めたのはなぜなのか。問題の核心は今も解明されていない。

 2018年6月、財務省が報告書を公表した際、改ざんの動機を記者に問われた当時の麻生太郎副総理兼財務相は「それが分かれば苦労せん」と言い放った。一方では雅子さんが否定しているにもかかわらず、「野党やマスコミが問題を追及したから赤木さんは追い詰められた」といった言説が、今も一部でまかり通っている。

 それでも解明に後ろ向きなのはなぜか。自民党総裁選を思い出そう。首相は出馬表明した直後、森友問題の再調査を否定はしなかった。ところが、その発言が「再調査に前向き」と報じられ、「安倍氏が怒っている」と伝えられると、たちまちトーンダウンした。

 大派閥の会長に就任し、自民党内での力が増している安倍氏を敵に回したくない。そんな意識がさらに強まっているに違いない。

 一億円の賠償金(税金!)の支払いも、彼らには安いものかもしれない。政治権力側の都合を優先し、追及を阻止するためなら何でもする。なんて卑劣な国に成り下がってしまったのだろう。

 総裁選当時、語っていた「民主主義の危機」という言葉も、首相は最近、あまり使わなくなった。今回の対応こそ危機的だとは思わないのか。(専門編集委員)