2021年5月3日月曜日

88. 中学社会公民的分野教科書より(1)

🌻旅に出る心🌻

* どこか遠い国へ行ってみたい。見知らぬ町をおとずれたい。人にはそんな心がある。毎日の同じような生活にあきてしまったときに、ふとそんな気持ちになる。そうばかりでもない。夢がいっぱいふくらんだときにもそんな考えをもつ。未知の世界へのあこがれが、旅に出る心を誘う。    

* もっと厳しい思いもある。自分が知っている世界、自分をとりまいている環境、それだけが世界ではない。わたしたちがまったく知らないことが、どこかでおこっているのではないか。わたしたちがあたりまえだと思っていることが、実はまちがっているのではないか。とんでもない、ありえないことだと信じていることが、実は本当だった、などということもあるのではないか。どこかはなれた所へ行ってみて、遠い所から、自分の国を、町を、学校を、家を見直してみたい。そうしないと本当のことはわからないのではないか。そうした思いが、旅をうながすこともある。  

* むかし日本が鎖国をやめたとき、はじめて世界のようすを知った人々はびっくりした。それを自分の目で確かめようと、ヨーロッパやアメリカに旅する人がふえた。今日では、アジア各地やアフリカに旅する人もふえている。わたしたちが知らない、あるいは失ってしまった大切なものが、見いだされるのではないか。新しい友情を築く糸口がえられるのではないか。そうした期待や願望も、人々を旅にかりたてる。

🌻伝統を求めて🌻

* 古都、京都は人気のある街だ。鎌倉もおとずれる人があとをたたない。人々は、現在の生活を追うだけではなく、伝統を求める。歴史を探る。そこにわたしたちの祖先がいる。わたしたちは、歴史という幹をたどって祖先という根に出会う。今日のわたしたちは、その根の上に茂った枝や葉であるともいえる。

* わたしたちの祖先はどこから来たのか。どんな生活をしていたのか。どんな苦労をしたのか。どんな夢をえがいていたのか。こうしたことを探っていったとき、何か思いあたることがある。祖先が築いた歴史のいとなみなくしては、今のわたしたちは存在しない。根がなければ、枝も葉も、新しい芽生えもないからである。

* 未知の世界を探求する。歴史を探求する。それは、現在のままでは満たされないところがあるからでもあろう。こうした探求の中から、わたしたちは、人間と社会生活を見直していく。自分自身を見つめ直す。このような探求が,よりよい世界を築いていく力となる。

(つづく)