2021年5月3日月曜日

89.中学社会科教科書公民的分野より(2)

 * (88のつづき)

🌻社会を探求する🌻

* 探求するには、探求の方法が必要だ。探求の方法が科学である。近代および現代は科学の時代である。

* はじめ科学は、自然を探求することからはじまった。ニュートン、ダーウイン、アインシュタイン、わたしたちの知っている有名な科学者は、みな自然の探求から出発した。

* 自然科学は進歩した。そして多くの高度な技術を生んだ。工業は発達し、経済も栄えた。それで人間はほんとうに幸福になったか。たしかに生活は便利になり、病気も治るようになった。しかし反面、何千万人もの人間の生命をうばった戦争が20世紀に二度もあった。産業公害で生命をそこなわれる人々もふえた。こうした惨害の原因をつきとめることも、その惨害を防ぐことも、自然科学だけではできない。

* その原因を探求するには、人間のいとなみ、社会を探求する科学がなければならない。それは社会科学である。政治学や経済学、法律学や社会学などである。これらの科学の発展は、自然科学にくらべるとおくれた。社会科学は、戦争の原因、貧困や公害などの原因を探求するが、そのような研究には格別の困難がともなったからである。科学の発達のためには、学問の自由や表現の自由、それらを保障する民主主義社会の発展がなければならない。

🌻知を力として🌻

* 社会科の学習でわたしたちが学んできたことは、社会についてのいろいろな学問の成果である。

* しかし、これまでに学んだことが唯一の知識であるとはかぎらない。別の知識も別の考え方もある。ものの見方や考え方は、立場や利害関係によっても変わる。偏見なくものごとを見るためには、これまで学んだ知識を、異なった見方とくらべ合わせてみることが必要である。科学の探求では、わたしたちは何よりも事実を事実として認める精神をもち、真理・真実の前には謙虚でありたい。

* わたしたちは、地球に生まれ、日本で生活している。かけがえのない人生を、かけがえのないふるさとを大切にしたい。人間とその社会を愛すればこそ、その真実の姿を見きわめたい。知識を広げることは、それだけ人間の自由を広げる。真実を学ぶことが、未来への希望をひらいていく。

* わたしたちは15歳。まだ人生ははじまったばかりである。探求の道はどこまでも続く。その道をしっかりとふみしめていこう。それが、生きていくということなのだから。