2021年4月4日日曜日

52.今日4月4日毎日新聞必読記事

 毎日新聞東京朝刊14版2面

<時代の風> 梯久美子(ノンフィクション作家)

激戦地の土砂 辺野古埋め立てへ

人間の尊厳守られるか

このブログの3月25日に<沖縄での蛮行 中止を>という、毎日新聞への 作家「池澤夏樹さん」の寄稿を紹介しました。今日の毎日新聞は再び作家の梯久美子さんが、<時代の風>欄に辺野古埋め立て問題について書いています。書き出しの部分と、最後の何行かを引用します。長いので全文引用はできません。ぜひ新聞を手に入れてお読みください。(*印は新聞で改行されていることを示します)

* 骨に見られていると思った。沖縄の写真家・比嘉豊光さんが撮った、戦後ずっと土に埋まっていた日本兵の頭蓋骨の写真を見たときのことだ。

* おそらく若い兵士だったのだろう、大きな歯がきれいにそろい、ぽっかりと開いた眼窩がこちらを向いている。写真とは「見る」ものだという思い込みが崩れ、このとき初めて向こう側から「見られる」という経験をした。向こう側とは、死の側である。

* 2009年夏から10年春にかけて、那覇新都心など、再開発の進むかつての激戦地から、多くの日本兵の遺骨が掘り起こされた。比嘉さんは、沖縄で遺骨収集を行っているボランティア組織「ガマフヤー」の代表、具志堅高松さんから連絡を受けて現場に行き、撮影したという。

* これらの写真は「フォトドキュメント 骨の戦世」(岩波ブックレット)に収められている。頭蓋骨の中に半ばミイラ化して残っていた脳の写真もあり、見たときは衝撃を受けた。

* だが、人の手で掘り起こされ、ていねいに水で洗われたこれらの骨は、まだしも幸運だったのではないかと思うような事態がいま進行している。遺骨が含まれている可能性の高い土砂が、辺野古の新米軍基地増設の埋め立てに使われようとしているのだ。

* 沖縄戦で、看護学徒として最前線に動員された宮城巳知子(みやぎみちこ)さんの話を聞きに沖縄を訪れたのは、06年9月のことだ。(この後が中心部分なのですが、長くなるので中略とします)

* 3カ所すべてで、私は足元の土を見て、感触を確かめた。私たちを見送ってくれたとき、宮城さんがこう言ったからだ。「壕に行ったら、自分が踏んでいる土を見てね。そこには私の友人たちの血肉がしみているの」語り部として本土からの修学旅行生を壕に案内したときも、必ずそう話したという。

* 宮城さんは15年、89歳で亡くなった。もしも本島南部の土に遺骨が一片も含まれていなかったとしても、宮城さんは、級友たちの血肉のしみた土を米軍基地の建設に使うことを許さないだろう。問題は骨そのものではなく、死者のすなわち人間の尊厳なのだ。