*書評のタイトルは「女性運動のデモクラシー」
*日本は女性の政治・社会進出が世界的に見て遅れているという議論が盛んだ。であれば、その分野の先駆者である市川房枝の業績は本来もっと参照されていいはずなのに、今やほとんど顧みられない。なぜなのか。
*「戦前の婦人運動リーダーにして戦時体制協力者、戦後は政治とカネの問題で理想選挙を実践し、晩年は参院全国区で1位当選した市民運動のアイコン。見方によって像が分かれる幅の広い人だったからでしょう」
*その市川に著者は、いつの時代、どの活動にも一貫していた一筋の信念を見出す。
*「複数政党による議会制民主主義の価値と可能性を信じ続けた自由主義者でした」
*自民党を批判した市川に当時の佐藤栄作首相が敬意を払うエピソードが印象的だ。
*「政治的立場は違っても、金権腐敗が戦後の政党政治も再び壊してしまうのではないかとの危機感を二人は共有していたのだと思います」
*佐藤の伝記も著した著者ならではの着眼である。
*教科書にも載っている「婦選(婦人参政権)なくして普選(普通選挙)なし」「婦選は鍵なり」の標語は戦前の市川の活動を象徴している。しかし、政治が重要と確信しながら政党に加わらず、参院議員に5回当選しても「政治家にはならない」と言い続けた。一筋縄ではいかない。
*活動の傍ら、運動機関誌に膨大な政治評論や女性の政治教育論を書き続けた姿が丹念に描かれ、全国の志ある女性たちがそれを支えた様子は感動的だ。世界的に活躍した緒方貞子ら多くの有能な女性を、国際舞台や政官界に送り出した功績は今日、もっとたたえられていい。
*本書にはフェミニズム用語が登場しない。そこに著者のひそかな自負を読み取ることもできる。
*没後40年。政党内閣制の成立・展開・崩壊を研究する政治家が、女性運動の偉人をデモクラシーの骨太な視点からよみがえらせようと挑んだ論争的な意欲作である。
(以上書き写し終わり。*のところは、新聞で改行のところ。いつものように誤字脱字誤変換などあれば、プロテアナオコの責任です。市川房枝1893〜1981)