2021年7月12日月曜日

NO. 183~政権与党化した記者たちへ〜その4〜

  安倍政権が13年、読売巨人軍出身の長嶋茂雄、松井秀喜両氏に国民栄誉賞を授与した件である。この時、安倍氏は巨人軍のユニホーム姿で東京ドームに登場した。かの大横綱・大鵬ですら生前はもらえなかった賞だった。

 「でもメディアのありようを国民はよく見ています。『文春砲』という言葉がありますが、新聞などが担うはずの組織ジャーナリズムのお株や国民の信頼を奪われた証左です。最近、香港の『りんご日報』が中国政府の弾圧で廃刊になりました。日本のメディアも大きく報じた。その自分たちの足元がすでに腐り、崩れている現実は目に入らないのでしょうか。

 言論弾圧ならぬ言論自粛、という不思議な言葉が思い浮かんだ。窓外のどこかで救急車のサイレンが高く、尾を引いて消えていった。

 『五輪』止められぬメディア

 かくいう私は、政治部記者ではないし、ルポやら何やらの合間に時折永田町に出入りする程度である。それでも決して「政権与党」化した記者たちばかりでないことは知っている。道はないのか。

 後藤さんがまとめた。

「与党化したメディアは、官邸筋が流す特ダネは取れるでしょうが、国民に信頼されるかどうかはまた別です。繰り返しますが、メディアは野党性があってこそ。少数派の正論を報じ、そして説得力ある『論』を立てること。そこに活路を見いだしてほしい。もう後はありません」

 後藤さんのもとを辞し、日比谷の街を歩きつつ考えた。

 世論の半数が中止や再延期を求めているのに、政権の思惑通りにずるずる、五輪は開かれようとしている。しかも4度目の緊急事態宣言下に、である。この異様な状況にも、特に異を唱えない与党化したメディアを、後世の人はどう評するのだろう。

 ごとう・けんじ

1949年生まれ。早稲田大卒。73年共同通信に入社し、82年から政治部。自民党の田中派、竹下派、外務省などを担当し、細川護煕政権時には官邸キャップろして55年体制の終わりを見届けた。政治部長、編集局長を経て07年退社。「ニュース23(TBS)キャスターも務め、現在も各局のニュース番組などに出演。著書に「平成政治史」(1〜3巻、岩波書店)など。同書の第4巻を執筆中。(書き写し終わり)

* <政権与党化した記者たちへ>の書き写しは、これでおわります。原文通りに書き写したつもりですが、間違いがあったらゴメンナサイ。なお、文字の大小や文字色などのレイアウトはプロテアナオコによります。