2021年7月12日月曜日

NO181〜180の続き〜

 (記者もあきれる「永田町の論理」)続き

「菅首相は開催するしかないんです。安倍政権時代の昨年3月、大会組織委員会の会長だった森喜朗さんは、大事をとって、2年延期(2022開催)を進言しましたが、これを退けて1年延期を決めたのが安倍さんです。自身の首相在任中に何としても五輪を開きたい。2年延期ではその宿願が果たせないからです。」

 問題はここからだ。安倍氏は病気辞任するが、森氏の危惧通り、コロナ禍は収束どころか今や4度目の緊急事態宣言である。

 「でも、ここで菅首相が中止や再延期を決断すれば、安倍さんの判断が実は大変な誤りだったことが証明されてしまうんです。無派閥の菅首相の政権基盤は、最大派閥・清和会を事実上握る安倍さんによっている。菅首相の決断は、安倍さんの最大のレガシーになるはずの五輪を、最大の汚点にする。安倍さんはこれを許さない。だから菅首相は開催するしかないんです。」

 私たちの健康や暮らしなどどこへやら、あきれた永田町の論理である。記者がひどいもんですね、とつぶやくと、後藤さんの、厚いまぶたに埋まる温和な目がすっと細くなった。

 内閣記者会の「ある出来事」

 「確かに政治は劣化した。コロナ対応を見ていても、その思いは深くなる。ですが、その大きな責任はメディアにあるのではないですか」

 そこで飛び出したのが、記者の政権与党化という言葉だった。

 「首相記者会見を主催するのは首相官邸詰めの記者でつくる内閣記者会です。そこで最近起きたことですが・・・・・」

 それは5月下旬のこと。首相会見は現在、首相官邸側が「感染防止」を名目に、地方紙やフリー記者などの参加枠を10人に制限している。参加者は抽選で決めるため、地方紙は1〜2社しか出られない。これでは地方の人たちの知る権利に応えられない。

 「そこでいくつかの地方紙が参加枠を増やすよう、内閣記者会として官邸に申し入れをしてほしい、と提案したのですが、一部の在京メディアが反対で、この申し入れは実現しませんでした」

 反対したのは複数のテレビ局で、「感染リスク」を理由にしたらしい。官邸の言い分そのままである。結局、記者会としてではなく、幹事社(記者会加盟の各社が交代で務める窓口役)名で要望するにとどまった。官邸は要望を蹴っている。

 「あきれました。質問機会を広げるのはメディアとして当然です。それを自ら封じてどうするのか。菅首相が官房長官だった19年2月には、官邸側が長官会見で厳しい質問をする東京新聞の望月衣塑子(いそこ)記者を排除するような動きをしたのに、記者たちは傍観しましたね。記者が与党や政権の一員になっているのと同じです。」

* NO180〜その3に続く〜*